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こうして、俺にはあと1日の猶予が与えられた。
しかしながら、心はもう決まりかけている。
ずっと躊躇っていたけれど、一度そう心に決めてしまえば、意外と気持ちが楽になったりもした。
店に戻ると、余っていたケーキは、そのまま家のほうの冷蔵庫に保管されていた。
どうやら琴ちゃんは、今日は持って帰らなかったようだ。
10個ほど余っていた中から、梅の好きそうなものを2つ選んだ。
「はい、モンブランとショート。今日までのだから早めに食べろよ。」
店の外で待っていた梅に箱を渡すと、彼女は嬉しそうに頬を綻ばせる。
女の子が店先でよく、ケーキの飾られたショーケースを幸せそうに見つめているような顔だ。
「サンキュ。私の好きなケーキばっかじゃん。」
「そう思ったから、そのふたつを選んできたんだよ。」
「ふっ……」
「何がおかしいんだよ。」
気を利かせたつもりが、笑われるなんて思わなかったから、あまり良い気分ではないけれど。
彼女には彼女の、それなりの理由があった。
俺も納得してしまう程の。
「だって私たち、付き合っている頃よりも今のほうが、よっぽどいい関係なんじゃないかって思ってさ。」
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