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うん……。
それはきっと、琴ちゃんのお蔭なんだよ。
彼女の笑顔が、俺の心をいつも温かくしてくれているから。
しかしながら、そんなキザすぎる本音を言えるはずもなく、いつものように話をはぐらかそうとする……が。
「あ……。」
梅が何かに気づいたかのように、目を大きく見開ける。
俺も振り向いて目を凝らすと、そこには琴ちゃんの姿があった。
「明日……悔いのない返事、ちょうだいね。」
まさかのタイミングの悪さに、梅は気を利かせるかのように、その言葉だけを残して足早に去っていった。
琴ちゃんとすれ違う時には、小さく御辞儀をして。
あっという間に、ふたりきりになってしまった俺たち。
「こんなところで、どうしたの?」
「あ……えっと、忘れ物したから引き返してきたの。」
「忘れ物?」
「その、ケーキ……おじさんが置いてくれていたの、おうちの冷蔵庫の中に忘れちゃって。」
どうやらあのケーキは、琴ちゃんが持って帰るのを忘れてしまった分のようだ。
2つだけ梅にあげてしまったことを伝えようとするが、先に口を開いたのは琴ちゃんだった。
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