第5話 つながる未来へ約束を

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***** その日は休みにもかかわらず、ケーキを焼いていた。 けれどもこれは、不特定多数の誰かへのためでなく、たったひとりの女の子のために。 思い返してみれば、琴ちゃんのためにケーキを焼くのは初めてかもしれない。 営業用で残ったものを、彼女が口にすることは頻繁にあったけれども。 どんなケーキをしようかと、幸せそうにケーキを頬張る姿を思い出す。 真っ白いホイップたっぷりのショートケーキ、甘くてほろ苦いチョコレートケーキ、一緒にここで作ったスフレケーキ。 色々と迷う中で目についた、キャロットハニーに使用しているマジパンの欠片。 ケーキの中でこれがいちばん大好きだ、と。 キャロットハニーの売り出し初日、全く売れない中で自信を失いかけていた俺に、一生懸命に伝えてくれた言葉。 今、その気持ちに応えたいと思った。 そして、拙い言葉を並べてでも伝えたかった。 格好いいシチュエーションなんて、俺には似合わない。 変に飾ろうとしなくても、琴ちゃんなら分かってくれる。 だって彼女は、こんな俺が好きになった女の子なのだから。 .
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