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この時間なら、まだ学校かもしれないな……。
そう思いながら、俺は深呼吸を2回してから通話ボタンを押した。
呼び出しコール3回で、電話は相手へと繋がった。
「もっ……しもし?」
いつもより上擦った声。
息を切らしながら話す、琴ちゃんの姿が目に浮かぶ。
「あの……俺、だけど……」
「……。」
ディスプレイには俺の名前が出ているはずだ。
そう思って「俺」だなんて馴れ馴れしく名乗ってしまったけれど、彼女が画面を確認せずに電話に出たのであれば、これは怪しげな男からの『オレオレ詐欺風』になってしまうと思い、急いで訂正した。
「あ、えっと……一ノ瀬、です。」
「……コウちゃん?」
どうやら、誤解されずに済んだようだ。
俺の名前を口にした、彼女の柔らかい声が響く。
「今、まだ学校……?」
「あ、うん。友達と残って勉強していたの。」
「そっか……。」
本当は今すぐにでも会いに行きたかったけれど、それじゃあ駄目だな。
試験勉強で忙しい彼女の邪魔はできない。
すると彼女は、心配するような様子で訊いてくる。
「もしかして今日、バイトの日だったっけ?」
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