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「え、どうして?」
「だって……コウちゃんが電話してくるなんて、初めてだったから。」
「……。」
どうやら、俺からの突然の電話を怪訝に思っているのは、琴ちゃんも同じのようだ。
確かに、俺から彼女にコンタクトを取ったのは、これが初めての試みだ。
もしかしたら、最初で最後になるかもしれないという可能性もあるが。
ネカティブでマイナス思考になりがちな自分を、掻き消すかのように目を閉じて頭を左右に振った。
「今日は水曜日だから、店は休みだよ。」
「あ……そっか! だったら……」
「琴ちゃんに、渡したいものがあるんだ!!」
自分の声が、いつもより緊張して震えたのに気づく。
彼女を目の前にしていたら、もっと恥ずかしくて仕方なかっただろうから、これが電話越しで良かったと心底思った。
「……渡したい、もの?」
「そう。だから……琴ちゃんが学校から帰ってからでいいから、少し会えないかな。」
「でも……遅くなるから、今度のバイトのときじゃダメかな?」
そう言われるのも無理はない。
想定内のセリフを、いつもなら相手に合わせて受け容れるけれど、今日だけはそういうわけにもいかない。
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