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「……今日、渡したい。」
「え……?」
「迷惑じゃなければ、琴ちゃんの家の近くまで行くから。」
ここまで強引に頼み込むが、彼女にとっては充分迷惑な行為なのかもしれないのに。
何としても彼女に会いたい気持ちが、俺を諦めさせなかった。
「……迷惑なんかじゃ、ないよ……。」
「えっ?」
「夜御飯、食べてからでもいい……? 多分、20時くらいになるけれど。」
「も、勿論!」
琴ちゃんがどんな顔をしながら、そう言ってくれたのかなんて分からないけれど。
その口調から、嫌々とか渋々とか、仕方なく承諾したような感じはなかった。
俺が都合のいいように捉えすぎているのかもしれないが。
「じゃあ……20時くらいに、行くから。」
口頭で、自宅までの道のりを簡単に説明してもらった。
彼女の家の近くに大きな公園があるようで、そこで待ち合わせることになった。
約束を取り付けて電話を切ると、重く圧し掛かっていた肩の荷が急に下りたような気がした。
自分で思っていた以上に、緊張していたことを痛切に感じた。
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