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「……コウちゃん、運転できるの!?」
「え、そりゃあ……こう見えても社会人だし。免許くらいは……」
「そうなんだ!! 凄いねーっ!!」
正直、世の中には車の運転免許を持っている人なんて、星の数ほどいるけれど。
あまりに目を輝かせながら、尊敬の言葉をかけてくる彼女に対して、悪い気分にはならなかった。
気を利かせて、らしくもなく助手席の扉を開けてエスコートしてみる。
そうすると、琴ちゃんは「お邪魔します」と嬉しそうな顔をしながら、中へと入ってくれた。
内装を見渡しながら、琴ちゃんはボソリと呟いた。
「……中、何にもないね。」
「え、あ……うん。俺の車じゃないし。」
とは言え、これが例え自家用車であっても、俺の場合は余計なものなど置かないだろう。
自分の部屋ですら執着がなく、物が少ないと言われているのに。
車内に入ると、幾分か寒さは凌ぐことはできるが、会話に詰まった時のシーンという擬音が聞くに堪えがたい。
俺は自分から率先して話を盛り上げるタイプではないし、今の状況では彼女にもそれを望めない。
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