3885人が本棚に入れています
本棚に追加
.
どうしようか……。
今すぐに話を切り出すべきか。
いや、もっと雰囲気が温まってからのほうが、俺的には……。
次の一手を熟考していると、琴ちゃんがふいに言ってきた。
「……少しだけ、ドライブしたいな。」
「え……?」
「コウちゃんの運転するところ、見てみたい。」
長い睫毛がこっちを向く。
俺の答えを待っている、真っ直ぐ純粋な瞳。
そんな風に言われたら、ノーとは絶対に断れない。
「……いいけど、時間は大丈夫なの?」
「うん。ママに言ってきたから、23時までに帰ったら平気。」
「そっか……。行きたいところはある?」
「ん……と、綺麗なところ。」
綺麗なところ……?
夜景が、ってことか?
普段からそういう場所に縁のない俺には、なかなかの高いハードルだ。
可愛い顔して、難題なリクエストを軽く言ってのける。
約3時間というタイムリミットと、無いに等しい知恵を絞りながら、やっとの思いで幾つかの候補を何とか頭に浮かべる。
ここまでの所要時間でも約5分だ。
「……低いところと、高いところなら、どっちがいい?」
「絶対に低いところ!」
「……了解。俺のセンスだから、あまり期待しないでね。」
.
最初のコメントを投稿しよう!