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慣れない運転に、慣れない首都高の乗継。
いつも以上に無口になり、ハンドルを握ることに集中した。
しかし琴ちゃんは、つまらなそうにする様子もなく、FMラジオから聞こえてくる今流行のヒットチャートの曲を、楽しそうに鼻歌で歌っていた。
帰宅ラッシュの時間帯は既に過ぎていたので、安全運転をしながらでも、目的地までは40分ほどで着いた。
俺が彼女を連れてきたのはベタながらに、レインボーブリッジの見渡せるお台場の夜景スポットだった。
辺りは勿論のことながら、ふたりの世界に入り込んでいるカップルの姿が多々ある。
「うわぁ……夜に来たの、初めてなの!」
「あ、そうなんだ。」
海からの風で相当冷え込んでいるのに、琴ちゃんのテンションは完全に上がりきっている。
つい数時間前までの気まずさなんか、とっくに忘れてしまっている感じだった。
「こういう夜景って……デートで来てみたかったんだぁ。」
その言葉に、琴ちゃんの小さな憧れを叶えたのが自分だったことに、申し訳ない気持ちになる。
本当はもっと彼女に相応しい相手が、ここに連れてきてあげるべきだったのに。
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