第5話 つながる未来へ約束を

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. 楽しそうに、前に家族でここに来たときの話を聞かせてくれる。 お父さんとお母さんが恋人みたいにイチャイチャするから、弟とふたりで恥ずかしくて堪らくなった話。 食べ放題の店で、お母さんと張り合って大量の料理を平らげて、帰りにお腹を壊してしまった話。 お気に入りの店で試着したワンピースを、お父さんが可愛いと褒めてくれて、色違いで2枚も買ってくれた話。 そこには彼女の、温かくて幸せな思い出が詰まっていた。 こんな風に、嬉しそうに笑う君を独占できて。 こんな風に、恋人のような甘い時間を共有できて。 それだけで幸せだと思えていたのに、 俺は――― 君が欲しいんだ。 肺の中までしみわたるような寒さが。 夜の静寂な雰囲気が。 遠くで輝く妖艶なイルミネーションが。 傍に漂う甘い香りが、無意識に彼女の腕を引きよせていた。 「……コウ、ちゃん……?」 「俺は、君が好きなのに……自分の夢を諦められない。」 「……。」 「離したくないのに、離れる選択を選んで……矛盾したことばかり言ってゴメン。」 小さな身体は、少しでも力強く抱きしめてしまえば壊れてしまいそうで。 けれども、そうしないと気持ちが伝わらないような気がして。 彼女が拒まないことをいいことに、優しくしっかりと抱きしめる。 .
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