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笑った顔は最高に可愛い。
けれども、泣いた顔は最高に愛しい。
それが俺だけに向けられているものならば、余計にそう思える。
俺の服をぎゅっと力いっぱいに握りしめながら、溢れそうな涙をぐっと我慢して、鼻を啜りながら言葉に詰まりながらも、一生懸命に気持ちを話してくれた。
「あたし……コウちゃんに、カノジョがいたって聞いて……すごくショックだったの……」
「……正確には、昔の彼女だけどね。」
「でも……あの人は、あたしの知らないコウちゃんを、いっぱい知っているんだなって……そう思ったら、悲しくて仕方なかった。」
「……。」
「だから……あの人と楽しそうにしていたコウちゃんに……あたったの……。」
まあ、久しぶりに話して楽しかったと言えば、楽しかったけれど。
それ以上の感情はない。
あくまで、昔の友達に会ったような感覚に近い。
「……勝手に行っちゃえなんて……酷いこと言って、ゴメンナサイ……」
そこまで言い切ると、まるで小さい子が泣き喚くように、大きな声を上げて泣き始めた。
すぐ近くに人がいなかったことだけが救いだ。
周りからしてみれば、俺が彼女を泣かしたかのように見える図だから。
まあ、多少はそうなのだけれど……。
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