第5話 つながる未来へ約束を

21/22
前へ
/226ページ
次へ
***** 帰りの車の中。 そこはまるで、一足先に春がやってきたかのように、温かく陽気な雰囲気に包まれている。 ちらちらと俺の横顔を見てくる、彼女の不審な行動にも気づいていた。 俺が逆の立場なら、きっと同じことをしていたに違いないから、あえてそこは触れないでおこう。 気持ちは繋がった。 俺は彼女に好きだと伝え、彼女も同じ気持ちだと応えてくれた。 これって……もしかして、俺たちは恋人同士になったということだろうか? ……訊けない。 そんなこと、恥ずかしくて訊けるはずがない。 「……門限、間に合いそう?」 「うん……。」 会話が続かない。 けれども今は、そんなもの必要ないとも思っていた。 信号待ちでふと隣を見た瞬間に、バチッと合ってしまった視線。 いつもの可愛い照れた顔で、彼女は応えてくれた。 まだ、夢心地の中にある現実。 「そうだ……琴ちゃん、後ろの紙袋取ってくれる?」 「あ、うん。紙袋だね。」 その中には、彼女のために作ったキャロットハニーが入っている。 何も知らない彼女が、それを俺に渡そうとするのを止めた。 .
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3885人が本棚に入れています
本棚に追加