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「それが『渡したかったもの』だよ。琴ちゃんに食べて欲しくて作ったんだ。」
「これって、もしかして……。」
「受け取ってくれないかな。俺の……気持ちだから。」
「……。」
信号が青に変わり、前の車が走り始める。
彼女の反応が気になるけれど、今は運転に集中だ。
そう心に決めて正面を向いていると、隣からは鼻を啜るような音が聞こえてきた。
一瞬だけ、横目でちらりと確認してみると、またボロボロと涙を零し始める琴ちゃん。
「さっきから、泣いてばっかりじゃん……」
そこまで泣かれてしまうと、水分不足にならないだろうかと心配になる。
そんな俺の不安をよそに、彼女はかすれるような声で小さく呟いた。
「だって私も……コウちゃんのこと、好きだもん……」
「……。」
「こんな気持ち……初めてだもん……。」
「……うん。俺も……初めてだよ。」
俺がそう言うと、君はいつも頬を赤く染めながら、幸せそうに笑ってくれる。
だから、何度だって伝えるよ。
君のその笑顔が見られるのなら、何度だって。
これからも、同じ未来を見ていたいから。
ずっと、ふたりで一緒に……。
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