第7話 憧れを追いかけて…

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. パパが事前に店の場所を調べてくれたお蔭で、迷わず来ることができた「フランソワ」。 洋菓子屋さんとは思えないほどの立派な外観で、わたし1人では絶対に入れないような、高級感漂う雰囲気だ。 店の前で躊躇いながら中を窺がっているわたしに、パパは穏やかな口調で訊いてくる。 「……中で、ケーキ食べる?」 「えっ……いいの?」 「だって、そのために来たんだろ?」 そう言って、パパが颯爽と店の扉を開ける。 甘い香りに包まれながら、ショーケースに並べられているのは、何十種類にも渡るケーキの数々。 「琴、これ見てごらん。」 「ん?」 「kotoだって。まるで琴のためのケーキみたいだね。」 ショーケースの中に飾られている、手のひらサイズの小さなケーキ『koto』。 オレンジ色のスポンジは、キャロットハニーの生地に似ている。 色とりどりのフルーツで彩られ、その中央には、天使の羽の形をしたマジパン。 魅惑的なケーキの中で、思わず釘付けになってしまう。 .
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