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「これって……」
確認する必要なんてない。
このケーキを作れるのは、この世でたった1人しかいないのだから。
その姿をわたしは、いつも近くで見てきたのだから。
「……『koto』に『羽』で琴羽だな。」
「え……?」
「パパは折角だから、このkotoにしようかな。琴はどうする?」
「わ、わたしも!!」
注文を終えると、パパとわたしは喫茶スペースへと移動した。
暫くして店の奥から運ばれてきたのは、照明の光で宝石のように輝きを放つ、コウちゃんのケーキ。
「このケーキ、琴みたいだね。」
「え……?」
「小さくて可愛くて、キラキラしているところ。」
「……。」
これはきっと、コウちゃんの想いそのもの。
ずっと離れていたのに、いつもわたしのことを考えてくれている証。
「……美味しいな。ママにも、食べさせてやりたかったな。」
「……そうだね。」
口いっぱいに広がる甘さを、ゆっくりと時間をかけながら味わった。
彼の底知れぬ愛情を噛みしめながら。
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