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エピローグ ―― 3 years later.
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携帯のアラームが鳴り響く、午前5時。
手探りで音を消して枕元の明かりをつける。
すぐ傍には、まだ夢の中から抜け出せないでいる、可愛い寝顔があった。
「……琴、朝だよ。起きて……」
「こーちゃん……ケーキ……まだ……?」
どうやら、夢の中でまでケーキを作っている様子の彼女。
あまりに幸せそうな寝顔に、起こすのが可哀相になってきて、俺はゆっくりとベッドから抜け出した。
彼女を置いて先に仕込みを始めること、約1時間。
血相を変えた彼女が、漸く厨房に登場する。
寝起き直後のボサボサ頭で。
「コウちゃん!! どうして起こしてくれなかったの!?」
「だって、気持ちよさそうに寝ていたし……」
「週末の朝の仕込みは一緒にするって、約束したでしょ!? 忘れちゃったの!?」
「忘れていないけど……」
だから、寝顔が可愛すぎて起こせなかったんだって……。
明らかに不機嫌になる彼女を前に、そんなことは絶対に口はしたくないけれど。
「だって……少しでも、コウちゃんの役に立ちたいのに。」
「……。」
「彼女としてだけじゃなくて……パティシエとして、コウちゃんの力になりたいのにな。」
拗ねた口調で、そんなことを言ってのける彼女は、彼氏という贔屓目なしにしても爆発的に可愛い。
今日……このまま、臨時休業にしちゃおうかな。
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