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フランソワでの修業を終えて、実家である『honey garden*』に復帰したのは先々月のこと。
どこで情報を聞きつけたのか、そこから雑誌の取材なんかも店に来たりして。
最近はわりと忙しく過ごしていた。
ちなみに彼女もこの春、無事に製菓学科の課程を終えて、その上『製菓衛生士』という資格まで取って、今ではパティシエとして働いてくれている。
特に忙しくなる週末は、こうして家に泊まって、朝早くから一緒に仕込みをする決まり事になっているのだけれど。
朝起きの苦手な彼女が、俺と同時刻に起きられたことなど未だに一度もない。
別にそれで構わないのだが、いちばん困るのは、コアラのようにしっかりと俺に抱きつきながら眠っている時だ。
無理やり起こしたくはないし、けれども俺は起きなければいけないし。
その上、拷問みたいな状況に曝されているし。
毎回、理性と本能をコントロールすることで、精一杯になる。
「……じゃあ、キャロットハニーは琴に任せてもいい?」
「え……?」
「うちの看板商品なんだから、重大任務。琴にしか頼めないことだよ。」
そう言うと、彼女は嬉しそうに頬を綻ばせる。
その顔を見るのが、今でも至福の瞬間だ。
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