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「嘘だよ。1日早いけど……誕生日、おめでとう。」
「わ……忘れられちゃったかと思ったぁ!」
「俺、そこまで薄情じゃないよ? 流石に、彼女の誕生日は忘れないよ。」
ぶっきらぼうに言い返すと、彼女はニコリと笑いかけてくれる。
いつまで経っても、その笑顔に幸せを感じられる俺は、今でも相当彼女に溺れている。
「明日も仕事だから……その代わり、今夜は乾杯してね。」
「うん。勿論だよ。」
仕事中は、どうしても『先輩』として接さなければならない部分もあるから。
こうしてプライベートで、ふたりでいる時くらいは、存分に優しくしてあげたいんだ。
3杯目のカクテルを飲み終えたころには、お酒の弱い彼女は、程よくほろ酔い気分になっていて。
俺は彼女に気づかれないように、小さく深呼吸した。
「……琴、俺からの……誕生日プレゼント。」
「え……?」
「安物だけど、受け取ってくれるかな?」
俺が手のひらに乗せて見せた小さな箱を、彼女は大切に包み込むように受け取ってくれた。
まだ、『本物』は渡せないけれど。
いつか、渡せる日が来て欲しいと願う。
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