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それは、どういう意味なのだろう……?
もしかして俺たちの反応を楽しむだけの、思いつきのドッキリ発言だったのだろうか。
俺はホッとしたけど、あんなに無邪気に喜んでいた琴ちゃんを思うと、いくら尊敬する父の悪戯心とはいっても許せない……
「新商品を考えるのは、お前だよ……聖。」
「はっ!?」
「そんなに驚く必要はないだろ。この店のケーキは今や、お前がほとんど作っているんだから。
新商品を生み出すのも、立派なパテシエの仕事だろ?」
「……。」
父さんの言葉はもっともだ。
決められた分量で決められたケーキを作りこなすだけが仕事ではないし、同じ商品ばかりが店頭に並んでいるのはマンネリに繋がり、客足を遠ざける要因のひとつにもなり兼ねる。
勿論、定番のケーキ類や特製のハチミツロールは絶対必須だけれども。
でも、俺はとうの昔に気づいている。
その才が俺には全くないことを。
「え、じゃあ……コウちゃんが新しいケーキ考えるの!?
凄いっ、私……全力で応援するね!!」
それなのに俺も所詮は、どこにでもいる浅はかで馬鹿な男だと実感する。
その嬉しそうな笑顔を目の前にすると、どんなことでもやりこなせる気になってしまうのだから。
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