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後片付けを始めていると、そこに聞き慣れたベルの音が聞こえてくる。扉が開く音。
母さん、また看板を裏返し忘れていたのだろうか。
そう思いながら視線を上にあげると、そこには制服姿の女の子が、息を切らせながら立っていた。
「あの……まだ、買えますか……?」
「あ、はい。でも種類少ないけど……」
すると彼女は乱れた呼吸を整えながら唾を飲み、再び口を開く。
「……チョコレートケーキ、ありますか?」
「え……あ、はい。」
「2つ……ください。」
疾風のごとくやってきた女の子は、そう言いながら鞄の中から財布を取り出す。
女子高生らしからぬ、やけに大きなトートバックだ。
教科書が詰まっているのだろうか。
そんなことを観察しながら考え、そして俺はショーケースに残っていたチョコレートケーキを取り出す。
そして、どうせ捨てるはずだった残りのモンブランとショートケーキ2個ずつ、全て箱に詰めた。
そんな俺の厚意のつもりだった行動に、彼女は急に焦り始める。
「あの……?」
「え?」
「私……今日700円しか持っていないから……6つも買えません!!」
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