第1話 お菓子な君に恋をした

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. 後片付けを始めていると、そこに聞き慣れたベルの音が聞こえてくる。扉が開く音。 母さん、また看板を裏返し忘れていたのだろうか。 そう思いながら視線を上にあげると、そこには制服姿の女の子が、息を切らせながら立っていた。 「あの……まだ、買えますか……?」 「あ、はい。でも種類少ないけど……」 すると彼女は乱れた呼吸を整えながら唾を飲み、再び口を開く。 「……チョコレートケーキ、ありますか?」 「え……あ、はい。」 「2つ……ください。」 疾風のごとくやってきた女の子は、そう言いながら鞄の中から財布を取り出す。 女子高生らしからぬ、やけに大きなトートバックだ。 教科書が詰まっているのだろうか。 そんなことを観察しながら考え、そして俺はショーケースに残っていたチョコレートケーキを取り出す。 そして、どうせ捨てるはずだった残りのモンブランとショートケーキ2個ずつ、全て箱に詰めた。 そんな俺の厚意のつもりだった行動に、彼女は急に焦り始める。 「あの……?」 「え?」 「私……今日700円しか持っていないから……6つも買えません!!」 .
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