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成程……。それで焦っていたのか。
すかさず俺の手を止めたのは、彼女の冷たくて小さな手。
小さいのに意外な程に力がこもっていて、まずそれに驚いた。
「……このケーキ、売れ残ると捨てないといけないんだ。」
「え……?」
「だから、この4つは……おまけだよ。」
どうせ捨ててしまうものだったら、こうして誰かに貰ってもらったほうが良い。
きっと相手が彼女でなくても、俺は同じように振舞っていたと思う。
すると、彼女は分かり易い程に顔を綻ばせ、頬を赤く染めながら笑顔で応えてくれた。
「……ありがとう。いただきます。」
それから会計をしていると、彼女は小さな声で俺に話しかけてくる。
その表情は、ついさっきとは打って変わり、どこか落ち込んでいるようにも見える。
「……今日学校で、友達と喧嘩しちゃったの。」
「え?」
「だから仲直りの印に、今からこれ持って謝りに行ってきます。」
俺が手渡したケーキの箱を受け取り、真っ直ぐな視線がこっちを向く。
仲直りの印……か。
たったそれだけの言葉の中に、この女の子はとても素直で優しい性格なのだと、想像がついた。
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