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第2話 新たなる挑戦
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「クリスマスに向けて、新しいケーキを作ろうと思うんだ。」
始まりはそんな、父さんからの思いつきのような言葉だった。
閉店後、後片付けをしている中。
その言葉に俺の手は止まり、そして琴ちゃんは何故か目をキラキラと輝かせ始める。
「えー、おじさん凄いです!! それって自分で開発するってことでしょ!?」
「うん、そうだよ。」
琴ちゃんから浴びせられる尊敬の念交じりの言葉の数々に、締まりのないへらへらした顔をし始める自分の父親を、俺は複雑な気持ちで見つめてしまう。
それはただのスケベな親父にしか見えなかったから。
「でもさ……何も、こんな忙しい時期にしなくてもいいんじゃないの?」
仮にもいちばん忙しいこの時期、販売用のケーキを作るのも普段より時間がかかるというのに、その合間に新しいケーキを作る……なんて。
現役を退いたと本人は言っているが、間違いなく彼はまだ現役だ……
「ん? 父さんは何もしないぞ?」
「へ?」
「まあ、暇なときに手伝いくらいならしてやるけど。」
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