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第3話 不意のパティシエ修業
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12月27日、朝の11時。
定休日の水曜日にもかかわらず、俺は厨房に立っている。
ただしコックコートは着用せずに、私服の上にエプロンをつけた姿で。
目の前には更に気合いの入った様子で、赤い水玉模様の三角巾とエプロンを身にまとった琴ちゃんの意気込む姿。
しっかりと腕まくりまでして、準備万端といったところだ。
「えっと……マカロンと、スフレのチーズケーキだったっけ?」
「うん!」
「じゃあレシピ用意しておいたから、材料は冷蔵庫から好きなだけ使っていいよ。」
昨日のうちに学生時代に使っていたレシピのファイルの中から、探し出しておいた2枚のレシピ。
まずは、琴ちゃんの第1のリクエストのマカロン。
有名な洋菓子店で売られているようなカラフルなマカロンとは違い、レシピに記載されているのは一般的な材料で事足りるチョコレートマカロンだ。
何故にこんな状況になってしまったのか。
それは遡ること、昨日の閉店後の話になる。
いつものように余ったケーキを持ち帰りのようの箱に詰めながら、彼女がふと呟いた言葉。
「ねえ、コウちゃん。」
「ん?」
「ケーキ作りって、難しい?」
「へ……。」
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