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‐④‐
バスを降りた浩太は、ホッとしていた。乗り過ごさなくてよかった。
脱力感でボーっとしていると、前から走ってきた女性の鞄が、すれ違いざまにぶつかった。
「ごめんなさいっ!」女性は走りながらそう言うと行ってしまった。
びっくりして少しよろけたけれど何ともなかった。
気をとりなおして歩きだし、バスターミナルから地下鉄への連絡通路を通る。そして階段を降りると切符売場が見えてきた。
リュックから財布を出し販売機に100円玉を二枚入れると小人ボタンを押して170円の切符を買った。
改札を抜けホームに入ると浩太が向かう駅行きである電車は発車したところだった。
ベンチに座り切符をポケットに入れようとしたとき、家を出る前に入れたはずの物が無い。
ベンチの周辺をキョロキョロ見ながらポケットにもう一度手を入れてみたものの、出てきたのは切符といつ食べたのかも忘れたアメ玉の包み紙だけ。どこで落としたのか考えていると、次の電車がもうホームに入って来てしまった。
しぶしぶ浩太は電車に乗って夏の家へ向かうことにした。
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