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 ベンチでバスを待っている女子高生、暇つぶしに友達へメールを打っている。  親子連れがやってきて、まもなくバスもやって来たのでメールを打つのを中断して乗ることにした。 「気を付けてね、着いたら電話するのよ~…」  などと、言う会話が後ろから聞こえた。どうやらお母さんは乗らないようで少年だけが女子高生に続いて乗った。  車内は、混んでいるが、二人が座るくらいの余裕はまだあった。女子高生は一番後ろ、少年は一番前の席に座った。  バスは走りだす。女子高生は座ると、またメールを打ちだした。 人を降ろしたり乗せたりを繰り返しながら次々バス停を過ぎて行く。  少年はバスに揺られて少しウトウトしていた。 「次は、野崎バスターミナル。地下鉄にお乗り換えのお客様は次でお降りください。」  アナウンスが流れると、誰かがボタンを押した。ピンポーン。 「次、停まります。」  しばらく走ると、地下にあるターミナルへ入っていった。 「野崎バスターミナル、野崎バスターミナル。えーお降りの方はお忘れ物の無いよう、お気を付けください」  運転手の声でハッとした少年は次々と降りていく乗客達を見て焦ったのか、あわてて上着のポケットから回数券を出すと急いで降りていった。  その時、ポケットから何か落としてしまったことを、少年も、バスに乗っている誰もが気付いていなかった。
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