夏休みと荒波水面。

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「……、犯人を知ってるの?」 冷淡な声に、ナースはカセットレコーダーを再生させた。男か女か分からない声が流れる。 『知ってどうすると言うのだ。なにをする。なにが出来る。なにも出来まい。身共としては、それを身の程知らずと言うのだが』 「知りたいのよ、もう知らないままは嫌だもの」 『なにをしようと言うのだろうな?』 「知りたい、それだけ。それだけで良い」 『ふむ。なにも出来なくとも、最悪無力を知ろうが、それで良いと。残念ながら、身共は教える気は皆無だ、砕き嬢』 「……なんでよ」 『教える義理はないのだから、教える訳もない。教える必要性がないのだから、教える筈もない』 荒波水面は舌を出す。桃色の舌を前歯で挟んだ。 『死にたいなら死ぬが良い。それで果たして、なにになるのだろうな。望んだ結果にならないが、砕き嬢も望んでいる結果にはならまい。なら何故、死のうとするのか』 舌を荒波水面は引っ込める。脅しは無駄だった。意味がなかった。困ると思っていた。予め録音されていた台詞に粉砕された。荒波水面は気力のない平坦な目で伺う。 「なんで、皆死ぬのよ」 『殺されるのだ。後一時間もすれば駆除されるであろう。主犯諸とも全て隠蔽され海の藻屑になる。政府は、危険因子を消したいらしいな』 「なんでよ」
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