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『青い。白い雲が浮いた青天井。風が吹き、動かされる雲は純白で、ただただ白い。五月の春風に漂う花のあえかな香り。校舎に向かう道すがら、奇異の目が集まるのは花壇の近く。
吊りスカートにホワイトシャツの身形はこの学園の指定服であり、春であるのに袖口が手首を隠すまで長いのは学園側の配慮である。
濡れ羽色の髪をした女子。別段特殊な外見をしている訳じゃなかった。淡々と、怒りに粛々と、花壇の花を蹴り潰していただけだ。誰を恨んでしたのかその女子は言わないし、悪戯ならば悪質極まる蛮行を通学中の他生徒は止められずにいた。
実の所、理性を消し飛ばす怒りを糧に花壇の中身をぐちゃぐちゃに踏みにじり、花弁を土色にしていたのではない。
女子に関して言えばどう仕様もなかったのだ。狂ったように踏み付けたのは悪気もないし、反省と後悔に苛まれて今にでも吐きそうな、または今しがた嘔吐したかの如く表情は青白い。血の気が引いていた。
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