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怪訝な顔をした荒波水面。理由としては花壇の事もあるにはあるが、一度告白されたのだ。勿論罪の告白とかではなく、愛の告白である。嫌いではないが、日の浅い間で付き合いは薄いのだ。判断出来ずに丁重に断り引き下がって貰った。しかし挫けずことごとく関わろうとするのである。迷惑極まりないが、早々悪くも言えずにずるずる付き合いを延長していた。
荒波水面は顔を笑顔にして、引きつったまま口を動かす。
「先輩おはよう御座います。今日は天気が良いですね」
「そうだね水面ちゃん、今日は良い天気だ。所で花壇だけど、どじっ子の水面ちゃんだ、大方転けたんだよね」
図星だ。だが荒波水面は素直に頷く気が起こらない。と言うより振った相手とどう話せば良いのか分からずにいる。実際、一度振られたからと諦めるのかと言う言葉があるが、振った側からすれば最悪である。諦めて貰いたくて振ったし、興味がないので振ったし、異性として意識した覚えもなかったし、今後もあっては困るのである。
――どうしよう――。
それに重大な事だが、荒波水面は澄ました顔の先輩の名前も知らない。なので素直に訊く。
「先輩、先輩の名前ってなんですかね。今まで聞いた覚えもなくて、記憶に全くないんですが」
拒否や拒絶としか思えない台詞にたじろぎ、困惑を添えて言葉を発する。
「み、水面ちゃん。冗談だよね、質が悪くないかな。僕泣いて仕舞いそうだよ、枕を濡らしちゃうよ。一応言うけど、静寂夜半だからね、覚えてる?」
「初耳です。なのにわたしの名前は知ってるんですね。不公平ですよ、もう。ほら、あるじゃないですか、こう、気味が悪くて」
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