第17話

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*** 都季は朝餉を終えると、調理場を覗いた。 早朝から稼働しているにも関わらず、調理場は未だ安息が許されぬらしい。ひたすら椀へ汁を注ぐ下女、二人一組で飯をよそう下女、鍋を洗う下女……。 熱気のこもった調理場は、せわしい空気に満ちている。 「あれ、都季ちゃん」 辺りを窺っていると、シノと目が合った。 向かった細長い作業台には膳がずらりと並んでおり、シノの手には持てる限りの杉の箸が束になって握られている。 「どうしたの?」 都季は土間へ降りた。 「料理長は居ないの?」 「料理長なら――」 シノは勝手口の近くにある竈に迷わず顔を向け「あれ?」と首をめぐらした。 おそらく先ほどまでそこに居たのだろう。 都季は、不在ならばそれでかまわないと思った。
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