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「こら、お前ら! 口じゃなく手を動かせといつも言っとるだろう!」
内証から戻ってきたばかりの料理長は、大声で一喝した。
下女らが皮むきの際に集まるのは、決まって土間の隅にしつらえてある板間である。
一段高くなった板間の上がり口に腰掛け、足元の篭の中に皮を落とすのだ。
彼女らはシノを愚鈍だと言うが、僅か離れたところで皮むきをしているシノの足元には、手を休めてばかりの彼女らよりも多くの皮が落ちている。
「シノ」
「は、はい」
大声で呼ぶと、シノはびくりと肩を踊らせた。
驚愕して立ち上がるのは、これまで幾度もシノを怒鳴っていたせいである。
おそらく、今度は何をしでかしてしまったのかと考えているに違いない。
「作法試験の料理をこしらえる。補助をしてくれ」
「わ、私でよいのですか」
シノは目を丸くした。
まことに不思議そうな顔である。
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