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「幾度も言わせるな。早う支度せんかい! 皮むきの道具を片付けろ!」
「は、はい! ありがとうございます! 片付けます!」
シノは満面の笑みで深く頭を下げると、芋の皮を捨てるために篭を抱えて勝手口から出ていった。
「ほらね。やっぱりシノを選んだ」
「料理長は人を見る目がないんじゃないの」
他の下女らは皮むきを再開し始めたが、どこからともなく醜い低声が聞こえてくる。
「今話したのは誰だ!」
料理長がねめつけると、下女らは目をそらした。
彼女らは誰が口を開いたのか判じているであろうに、誰一人とてそれを告げようという様子はない。
「お前ら、誰に逆らっとるか判っとらんようだな! わしが調理場に要らんと言えば、お前らは即刻洗濯場へ回されるんだぞ!」
彼女らを差す指に力を込めた。
指差された者は、顔面を蒼白させた。
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