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風を含みかけては濾して波立つ白い布は、秋の光を吸収し、それを自らの光と化したかの如く、眩しさを不規則に放っている。
その下で、もう既に幾度も聞いた言葉が厳格に発された。
「次の者!」
都季は、一歩前に進み出た。
机に向かった検使は、今日、都季が遊郭を出る折、許可証をあらためていた男である。
彼は、紙製ではなく木製の許可証を出した都季の顔を覚えていたらしく「雪美館だ」と、脇に伝えた。
脇には、通行人記録を調べる者と、上級女録の写しを調べる検使が、忙しそうに冊子を捲っている。
折しも、鼻先の検使が姿勢を正して立ち上がった。
「これは蘭署長様」
脇にいた検使らも急ぎ立ち上がり、都季の右肩の向こうに頭を下げている。
都季が振り返ると、顎髭を自慢気に撫でつつ歩いてきた腹の出た男が目に映った。
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