第26話

10/40
前へ
/40ページ
次へ
「女長。ハナエ様に何とかするように言ってください。カヨは部屋付きに向いてないです」 しかし部屋付きも、蓮吾とモエが欠けたことで、かつてと比べ、僅かなぎこちなさが仕事の遅れなどから感じられる。おそらく欠員は出せない。 何とかなるのだろうか……。 セツは肩で息を吐き、やはり曖昧に頷いた。 *** 「今月の給金を渡す」 内証に家長の声が響いた。 上級女八名は連座して一礼したのち、一番娼妓から家長の前に進む。 給金は、売上金から借金が引かれた額である。 「綾」 「はい」 家長と対座し、一礼して慎ましく給金をいただいた綾は、白い綿布に包まれたそれの重さに眉を曇らせた。 「家長様。憚りながら申し上げますが、これに手違いは御座いませんでしょうか」 「手違いはない。さがれ」 綾は納得のいかぬ顔を浮かべたが、それ以上何も言わず、目礼して下がった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加