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「女長。ハナエ様に何とかするように言ってください。カヨは部屋付きに向いてないです」
しかし部屋付きも、蓮吾とモエが欠けたことで、かつてと比べ、僅かなぎこちなさが仕事の遅れなどから感じられる。おそらく欠員は出せない。
何とかなるのだろうか……。
セツは肩で息を吐き、やはり曖昧に頷いた。
***
「今月の給金を渡す」
内証に家長の声が響いた。
上級女八名は連座して一礼したのち、一番娼妓から家長の前に進む。
給金は、売上金から借金が引かれた額である。
「綾」
「はい」
家長と対座し、一礼して慎ましく給金をいただいた綾は、白い綿布に包まれたそれの重さに眉を曇らせた。
「家長様。憚りながら申し上げますが、これに手違いは御座いませんでしょうか」
「手違いはない。さがれ」
綾は納得のいかぬ顔を浮かべたが、それ以上何も言わず、目礼して下がった。
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