第26話

11/40
前へ
/40ページ
次へ
都季は首を傾げた。 その後、綾に続いて給金をいただいた上級女らも、皆いぶかしい顔を見せたのである。 「都季」 「はい」 自分の名を呼ばれ前に出た都季は、漆塗りの矩形(くけい)の盆から手渡された給金を両手に受けたとき、ようやく皆の心を知った。 思っていたほどの重みを感じなかったのである。 「家長様。再度申し上げます」 全員が給金をいただくのを見届けた綾は、思いきった口調で言った。 「皆の様子を見れば、皆の給金が少なかったのだと判じられます。これに手違いがないとは、いかなる由かお聞かせください」 家長はしばし黙った。 しかし、理由を告げたほうがよいと判断したらしく、やがて重い唇を開いた。 「租税が上がったのだ。娼館に負担が掛かれば、娼妓の給金は下がる」 綾は閉口し、他の上級女らは目と目を見交わした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加