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都季は自室に戻ると、深いため息を吐いた。
保釈金に大枚をはたいた故、懐が寒いのだ。娼妓は金がなくても食ってはいけるが、衣装や化粧品を買い揃えるには金がいる。
しかし、自らの買い物を控えれば、ハナエとセツに責任者就任、女長就任の祝いの贈答品を買ってやれるかと思い、午を過ぎた頃に内証を訪れた。
「買い物に行きたいだと?」
家長は文机に置いた許可証申請用紙をねめつめ、腕を組んだ。
遊郭を出るには、女将か家長の捺印をいただいた申請用紙を郭署に提出し、許可証を発行してもらわねばならぬ。
「はい」
「しかし、先日の事件から日も浅い。郭署の許可がおりぬであろう」
先日の事件とは、小梅の出奔のことである。
「郭署が発行してくださらぬなら諦めます」
「ふむ」
家長は「ならば好きにするがよい」と捺印したが、おそらく叶わぬであろうと考えているのが、声にあらわれていた。
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