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セツが二階の担当に選ばれるまで、いかほどの年月を費やしたか……。一階娼妓から二階娼妓へと出世したハナエが自らの担当にとセツを指名してくれた故、これでもセツは若いうちに二階にあがることが出来たのだ。二階担当は概して古参者に偏るものであり、新参者は古参者の縄張りをおそれ二階に足を踏み入れられぬものだと思っている。
折しも、見世娘の部屋を担当している部屋付きがカヨに気付いた。
「あんた。ここをどこだと思ってんの!」
カヨの母親ほどの年齢である彼女は、今しがた引いてきたばかりの敷布を丸めつつカヨに近付き、それを抱えたのとは反対の手でカヨを連れ去ろうとした。
彼女からは新参者を大目に見てやろうという心の広さが見えたが、カヨは彼女の手を振り払った。
「上級女の部屋は女長の担当だと知っています。女長が忙しそうだったから、お手伝いしただけです」
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