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「誰がそんなことをしろって言ったの。二階担当ならともかく、あんたは一階担当じゃないの。でしゃばるんじゃないよ」
「申し訳ありません。気をつけます」
カヨは頭をさげると、階を降りていった。
「女長。あんたは優しすぎるんだよ。部屋付きには部屋付きのやり方があるんだからさ。もっと厳しく言ってやんなきゃ」
温かい手で、背中に力強い喝を入れられた。
彼女の口調は刺があるように聞こえるが、腹黒さのない爽快な空気には好感さえ抱いてしまう。
セツは「少しずつ覚えていくと思いますので、気長に見守ってあげましょう」と答えたが、カヨの気ままさは部屋付き全員の反感を買っていった。
先ずもって、カヨは調子が良すぎるのだ。忠告されたにも関わらず、たびたび都季の部屋を訪れ、用はないかと機嫌をとる。二階担当の部屋付きに見つかり叱責されると「申し訳ありません」と頭をさげるのだが、やはり再び都季の部屋を伺っているのだ。
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