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流れの中に立ち止まることも、それに逆らうこともせず生きてきたのだ。流水は流水のままにやり過ごすほうが、ことを荒立てずに穏便に片づけられると思っている。さような部分が、己に足りぬ尊厳性に繋がるのやもと思うと、自分が臆病者に思えて仕方ない。
「家長様の信頼がないとは」
都季のいぶかしむ声が聞こえた。
「え? 判らないのですか? 女長は経験が足りないからって責任者に選んでもらえなかったじゃないですか。無能なんですよ。前の女長が敷布洗いに降格したのは、今の女長が謀ったのかもしれません。都季様も女長を信頼しないほうがいいと思います」
「女長はそんな人じゃないわ」
「いいえ。都季様はご存じないだけです」
「何を……。私はお前より……」
「こんなことを言うと失礼かもしれませんが、都季様は事実、妙児さんの言いつけで私達が綾様の帳面を探していた事をご存じありませんでした。部屋付きにしか判らないことは幾らでもあります」
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