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「カヨ! お前は女長に向かって何という口の聞き方を……」
都季は目を剥いて憤怒した。
女長より優れた知識を披露したのに、都季は横柄な口調を責めたのだ。いま少し、慎ましく進言すべきであったと察したが、吐いた唾は飲めぬ。
「都季様」
セツが穏やかな声で都季を制した。構いませんとでも言うかのように、首を横に振っている。
カヨは一先ず助かったと安堵した。
「カヨ、悪かったわ。確かに香油をよく存じている者に任せた方がいいわね。あなたなら出来る?」
セツの目が媚びている。己の非を認め、カヨを信頼している。
萎みかけていた自負心が、気力を得て満開に咲いた。
「当たり前ではないですか。女長より私の方が香油には詳しい筈です」
「そう。ならば香油はゆくゆくにも、カヨに任せたほうがよいのね」
「では湯あみの仕度は私に任せてくださるのですか!?」
セツが口を開きかけたとき、都季が驚愕した声をあげた。
「女長!」
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