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「料理に不備がありましたか」
偉進の手を払いのけた。
「いや。料理は旨い。気がきくあんたが気に入らん」
「いかなる意ですか」
都季は目を余所にやった。
「何か、俺に隠し事をしてるな?」
偉進の勘の鋭さは恐ろしい。
都季は、ふと思いついた言葉を口にした。
「実は……給金が随分下がったのです」
「ん? さらに金を遣いに来いと言いたいのか?」
「いいえ。そうではなく、租税が上がったという理由で給金が三割も削られたのです」
「何かの間違いじゃないか? まことに租税が原因か?」
「何故ですか」
偉進は腕を組み、首を傾げた。
「ふむ。俺は郭署のことは知らんから確かな事は言えんが……。幾ら遊郭が隔離された区域とは言え、税の管轄は民部だ。流石に税を引き上げるとなれば朝廷で議論したと思うんだがな。さような話はあったかな……」
「あったかな……って。判らぬのですか?」
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