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「お許しください。実は……かねてよりお慕いしていた方と昨夜お会いしたのです」
「何……? お慕いしていた方だと?」
「はい。私が遊郭に来る以前に出会った方です。私を身請けしたいと仰いました」
「して。それを飲んだのか」
「いいえ。お断りしました。しかし今は悔いております」
「ほう。あんたは俺を軽んじるのか」
都季の頬の横に手を付き、都季を見下ろした目は冷たい。
「軽んじるなど……。そうではないから、全てを打ち明けたのです」
「ふざけるな!」
偉進の大声は、都季を怯えさせた。
「あんたは、女か? それとも娼妓か?」
「何を聞きたいのですか。私は女で、娼妓です」
偉進は馬鹿にした笑いを鼻から出した。
「俺が聞いたのはな、あんたは一人の男に食わせてもらう街の女に憧れてるのか、あるいは多くの男を相手に自分の力で食っていく遊郭の女なのかって事を訊いたんだ」
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