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「それが何だと仰るのですか」
「あんたが、一人の男に縛られたなら街の女と変わらんからだ。客を取らん娼妓ってのは、客に惚れた妓(おんな)しか俺は知らん。あんたはどっちか知らんがな」
「何故、さようなことを言われねばならぬのですか。旦那様に私の心などお判りにならぬでしょう!」
「確かに、俺にはあんたの心は判らん。あんたが何を考えて俺に馬鹿正直に話したのかもな。だが、あんたははじめ遊郭一の給仕女になると言っただろう! それを辞め上級女になった。そのあんたを未だ贔屓にしてやってる俺の心が判らんのか!」
「不満であるなら、お辞めになればよろしいのです!」
つい、衝動的に出た言葉であった。
「何……?」
明らかに、偉進の声音が変わった。
「贔屓に"してやってる"など……。ならば私が上級女になった折――旦那様との約束を破った折に、私を捨て置いてくださればよろしかったのです!」
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