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紹彩志が北の間を出ると、廊下にいた都季が駆け寄った。
「彩志様! 話は終わったのですか」
都季の眼差しは顔色をうかがうかのような弱々しいものであった。
ただ、それだけのことが癇にさわった。
「そなたは何故、蘭の望みを聞いたのだ」
偉進から聞いた話である。
拷問で命を落とす者も多き審判を逃れる為であったとも聞いた。仕方なきことだと判っている。
しかし、妙児に罪をなすりつけた郭署の"何らかの都合"が、まさか都季であったとは、堪えがたい苛立ちが腹の底で煮えたぎっていた。
「私の心が判るか? そなたの身が危ういと聞かされ無下に出来ようか。調査を無に帰することで私が受ける損害がいかほどのものか、そなたには判らぬであろう!」
否。既に、私娼を捕らえるねずみ取りは、燕麗の父に言われ解いた。口惜しいが、それを諦め、蘭の尻尾を掴むことに注力するつもりであった。
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