第36話

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*** 「きゃぁああっ!」 廊下の拭き掃除を終え、調理場に戻って来たシノは、井戸の傍らの光景を目にして立ちすくんだ。 楊爺が血の海に伏せていたのだ。 はっと首を回した斎の目は、シノを見るや否や、いつにも増して冷たい色を放った。 「旦那様!」 刹那、紫音が斎を呼び止めるような声を張った。 しかし、その声は届かなんだらしく、斎は苛立ちを踏みしめるような足でシノに詰め寄った。 「旦那様! どうかお助けください! シノに罪はございません」 再び、紫音が声を張った。 助命を哀願するかに聞こえる声は、枯れきっている。 まさか、自分も殺されるのではないかと感じ、シノは震える足で後ずさった。 「お前が治部に告げたのか」 「あの……何を仰ってるのか……わ、判りません……」
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