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ふと横をみると、
幼い禿は、「折檻」という言葉にブルッと身体を震わせた。
この煌びやかな街に棲む妓には、様々な風習や敷きたりという名の「掟」があった。
事細かく決められた「掟」に逆らえば、容赦ない「折檻」が待っていた。
それは年端もいかない幼子であろうと、天下の花魁であろうと関係無かった。
勿論、幼い頃から この街で育ってきた薫風とて「折檻」の恐ろしさは身に染みていた。
幼い頃の薫風は、今とは比べ物にならぬ程のお転婆だった為、よく「折檻」を受けていたのだから……。
そんな自分の昔と重なる禿に目を細めた薫風は、禿を安心させる様にソッと囁く。
「ウチが言わねば誰にも分かりはしまへん。」
「花魁!」
「だから、お喋りはお終いや。良いですね?
行儀良く出来たら、後でご褒美にお菓子をあげまひょうな。」
「はい!ウチ、キチンとしますッ!!」
小さな禿の零れんばかりの笑顔に頷いた薫風は ゆっくり瞬きをすると、僅かに落とされていた視線を正面の男達に向け、先程よりも艶っぽい色香を漂わせ進んで行った。
己の帰るべき巣へと。
己の想いを寄せる男の元へと……。
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