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「なぁ? テメェ、何をそんなに駄々こねてやがるんだ?」
不意に屈み込んだ男が、男衆三人に床に押さえ付けられてる自分の顎を掬い上げてくる。
物珍しい物を見る様に 見下ろされた男の目は 楽しげに細められていた。
「新造好きのシワシワな爺様に水揚げされるのが嫌なだけや。あんたに何も関係あらしまへんやろ。」
プイと顔を逸らし顎にあった男の手を払いのける。
「ほぅ、テメェはまだ生娘(キムスメ)か。
だが、そんなに嫌がるもんか? 遊女は水揚げせにゃ、一人前には成れんだろうが。
んなモン、黙って目ぇ瞑ってりゃあ終わるじゃねぇか?」
「はぁぁああぁッ!?
あんた阿呆かッ!?そんなんで終わったら誰も苦労せんやろ!
あんな助平爺ぃがウチの身体の上を這い回るか、思うたら吐き気がするわッ!!」
「んなモンなのか……?」
「チッ!何も分からん阿呆が口出すな! この…ど阿呆ッ!!!」
しげしげと自分を見下ろしてくる男に盛大な舌打ちをお見舞いすれば、女将の非情な言葉が響いた。
「そこまでや、薫風。
今日の水揚げは延期にしたる。その代わり……分かってるやろ?」
薫風を取り押さえる男衆達に女将が目配せすると、薫風は廓の奥に連れて行かれる。
折檻部屋へと……
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