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「じゃあ、あたしたちはこれで帰るから」
赤くなった顔を隠すようにして奈津子が立ち上がる。
奈津子に寄り添うようにして、咲も立った。両手を振り上げながら。
非常に咲は挙動が大げさな癖があるようだ。
「咲ちゃんは、おねえちゃんの面倒見てあげえらいなぁ」
「まーねえ!」
自慢げに威張る咲。
「何言ってんのよ!逆よ逆!」
「……へいへい」
子供相手にむきになって、むしろこころが子供なのは奈津子だ。
「ほら、暗くなる前に帰れよ?」
「うん!」
玄関まで見送り、外へ追い出す。
「またねえー、ばいばい!」
「はいよ、ばいばい」
オレはへらへらと笑ってしまう。こういう純粋さは田舎も都会も変わらない。
「あんた、咲に騙されんじゃないわよ。この子本当はすっごい悪魔……」
「おねえちゃんウルサイヨ」
姉をにらむ妹の姿は、奈津子の言うとおり悪魔そのものであった。
前言撤回。都会の純粋さは、血塗られたかりそめの楽園のようだ。
「うっ……」
うろたえる奈津子。それでも仲が良いのだから、心はつながっているのだろう。
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