第1話 ベタが1番ベタじゃない

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 腕時計の時間は……8時50分……。目覚まし時計は、7時。 「とまってるじゃねえか!」  もうダッシュで家を飛び出す。足元に違和感があるが、おそらく靴が左右反対だ!だが、そんなことはどうだっていい。 「結局ベタかよ!」  舌打ちをしながらそんなことをつぶやく。体力には自信がある。入学式は9時から。大丈夫、全力で飛ばせばギリギリ間に合う。  都会とはいっても、ここは閑静な住宅街。都会へのアクセスはいいのだが、期待していたのとはずいぶんと違う。  タッタッタッタッタッタ。足音が響く。くそっ、しんどい。だが、ここであきらめるわけにはいかない。 「はっ、はっ、はっ」  息が荒れる。道行く人はオレを奇怪なものをみるような目で見つめる。  オレだって好きで走っているわけではない。時計が悪いのだ。  曲がり角だ。ここで美少女とぶつかれば、オレの青春はベタづくし……。  キュッ。ボスッ!バタン!  擬音語だらけで申し訳ないが、カーブしてぶつかって倒れたのだ。 「いったぁい」 「あ、わ、悪い、大丈夫か?」
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