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突然、目の前で、目に焼きつくような赤色が飛沫上がる。
その瞬間、そこに居る全員は、それがふざけ半分で前へと駆けだした友人の頸から噴き出ているものだと理解することはできなかった。
3人分のライトが差し示す先には、足を絡めてリノリウムの床に倒れ込む男。
「た……」
「拓海?」
放射状に広がっていく血だまり。
その男の持っていたライトが血だまりに転がり、光が前方を差した。
全員がその先を自然となぞる。
そこに居たのは、この場所――封鎖されたはずの夜の廃病院には、とても不似合いな格好をした少女だった。
黒い髪を左右に結い、中世西洋の白い衣服に身を包んでいる。
それとは無関係に、身体全体が淡く光る白い被膜に包まれているようだった。
背は低く、一向の腰まである程度か。顔立ちは小学生以下の幼な顔だが、見るものを不思議と戦慄させて余りある、半月のごとく捻じれた笑みを浮かべていた。
蒼白な両手は、赤く濡れたうさぎのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
ぬいぐるみの手には朱に染まった医療用のメス。
惨劇の幕は、その少女の一言から始まった。
「みんな、おともだちになろう?」
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