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序
生前、かなり無口であった祖父は長年、役場で勤めていた事もあってか、かなり几帳面な性格で、亡くなったのは突然ではあったのだけれども、自分も死ぬ時はこうありたいと思う程こざっぱりとしていて、四十九日が終わる頃には粗方の整理をつける事が出来てしまった
祖母は既に何年も前に亡くなっていて独り暮らしだったので、土地を含め祖父の家を今後どうするかを相談すると言う事で、一度家の中を空っぽにしてしまおうとなったらしく、丁度仕事もせずぶらぶらとしていた僕に遺品整理の白羽の矢が当たったのは当然の成り行きだった
借家ではないので別段期限はないうえに、身内の頼まれ事なので俄然勢いはなくなってしまう
祖父との思い出に浸るにも、無口な性格だった祖父とはほとんど話をした事も無かったし、祖母が亡くなってからは僕も大きくなっていたので、祖父の家を訪ねる事もほとんど無かった
ずいぶんとがらんとしてしまった祖父の部屋に寝転がりながら、祖父との思い出をそれとなく追っていると、何度か祖父の年の離れた兄、勘治の話をしてくれた事を思い出した
……確か
記憶を頼りに天袋を開けると、その時に取り出した勘治の日記と黄ばんだ新聞の切り抜き、そしてその時には気付かなかった祖父の日記があった
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